一般貨物自動車運送事業の許可

一般貨物自動車運送事業許可は、各許可要件の基準を理解することが要求され、かつ、当該申請業務に着手してから事業が開始されるまでに一定の期間を要することからも、我々行政書士が扱う許認可申請業務の中でも難易度の高い業務のひとつとされております。。
通常、順調に手続きが進み許可が取得されたとしても、事業が開始されるまでには6か月以上の期間を要し、営業所や車庫等の許可基準を満たさず補正に応じるようなことがあれば更にその期間は延長されることになり、許可申請の着手から事業開始まで1年を要したという事はよく聞く話であります。
無駄な時間を掛けず、速やかに事業を開始するには、申請の許可基準を理解し、適正な事前準備を整えて申請に望まれることが鍵となってまいります。


申請依頼から事業営業までの流れ

(申請前準備期間)
 1.業務受任
 2.審査基準の確認・適合調整
 3.申請書作成・ご用意いただく書類のご依頼

(申請後審査期間)
 4.営業所の所在地を管轄する運輸支局に申請書を提出
 5.役員法令試験の受験(奇数月の実施、2回まで受験可)→合格
 6.運輸局で書類審査(標準処理期間は3~5ヶ月)
 7.許可処分の通知
(許可処分の通知は、通常は電話で行われ、同時に許可証交付式の日時が案内されます。)
(許可通知から事業開始までの期間)
 8.一般貨物自動車運送事業許可証交付(式
(当日は指導講習が行われますので、代表者若しくは運行管理者が出席します。)
   (東京では交付式は行わず、許可後1週間ほどで輸送部門の窓口又は郵送で交付を受けます。)

 9.登録免許税の納付  
10.運行管理者・整備管理者専任届(※1)
11.運輸開始前の確認報告(※1)
   (※1)事前に用意することで許可証交付式当日に手続きが可能です。
12.車両登録(緑ナンバー取得)
13.運輸事業(営業)開始(許可後1年以内に営業開始が義務付けられ、開始後遅滞なく運輸開始届を提出)(※2)
14.運賃料金設定届(運賃料金設定後30日以内に提出)(※2)
   (※2)運輸開始届と運賃料金設定届は同時に提出することが一般的となっております。

(事業開始後)
15.巡回指導(事業開始届の提出後、1~3ヶ月後に「適正化実施機関」により巡回指導が実施されます)

上記の申請開始から事業開始までの流れからも、多くの手続きに掛ける時間と労力を要する事が理解できるのではないかと思います。

ここで、短期間で事業開始を実現させるポイントは、「しっかりした事前準備」にあります。
「関係法令を十分に理解し設備及び事業に関わる人の確保」、「漏れのない申請書の作成・提出」、そして、「役員法令試験に向けた事前対策」が必要になります。
そして、忘れてはならないことが、事業開始までには多くの資金の確保を要することです。
土地や事務所、そして事業用自動車の確保に多くの資金が投入されます。それだけではありません。事業を動かすには多くの人材の確保が必要です。そして、事業の開始が遅れれば、それだけ資金を回収する術も遅れることになります。

運送事業計画で求められることは、当該許可申請から事業開始までに時間を要する事を理解した上で、余裕ある計画的な準備を行うことにあるのではないでしょうか。

役員の法令試験

法令試験は、申請書を運輸支局に提出後の奇数月に運輸局で実施されます。具体的な試験日等の指定は、試験実施日の概ね2週間前までに、申請会社の登記簿上の本店住所あてに郵送で届きます。

受験者の範囲は、一般貨物自動車運送事業に専従する役員です。具体的には、株式会社の場合の代表取締役又は取締役であり、1社あたり1名のみ受験ができます。
また、運行管理責任者資格を有する役員であっても、役員法令試験を免除することはできず、当該許可取得には必ず合格することが条件となります。

受験可能回数は2回までです。最初の受験で不合格となった場合は、翌々月に行われる試験に再受験できます。しかし、再受験でも不合格判定を受けた場合は、当該申請は却下処分となります。
通常、再受験でも不合格判定を受けた場合は、当該申請は「取り下げ」をし、改めて再申請を行うことが一般的です。

出題方式:〇✕方式及び語群選択方式
出題数・試験時間:30問・50分
合格基準:8割以上(24問以上)の正解率で合格
出題範囲
 ① 貨物自動車運送事業法
 ② 貨物自動車運送事業法施行規則
 ③ 貨物自動車運送事業輸送安全規則
 ④ 貨物自動車運送事業報告規則
 ⑤ 自動車事故報告規則
 ⑥ 道路運送法
 ⑦ 道路運送車両法
 ⑧ 道路交通法
 ⑨ 労働基準法
 ⑩ 自動車運転者の労働時間等の改善のために基準
 ⑪ 労働安全衛生法
 ⑫ 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
 ⑬ 下請代金支払遅延等防止法

参考書の持込は不可となるかわりに、試験当日に関係法令等の条文集が配布されます。
関係法令集、過去3年分の試験問題及び正答は、関東運輸局のHPより確認することができますので、試験対策にご利用できるかと思います。


許可基準

 貨物自動車運送事業法により、国土交通大臣は、次に掲げる4つの基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならないと定められております。

 ① その事業計画が過労運転の防止、事業用自動車の安全性その他輸送の安全を確保するため適切なものであること。
 ② ①に掲げるもののほか、事業用自動車の数、自動車車庫の規模その他の国土交通省令で定める事項に関し、その事業を継続して遂行するために適
  切な計画を有するものであること。
 ③ その事業を自ら適確に、かつ、継続して遂行するに足りる経済的基礎及びその他の能力を有するものであること。
 ④ 特別積合せ貨物運送に係るものにあっては、事業場における必要な積卸施設の保有及び管理、事業用自動車の運転者の乗務の管理、積合せ貨物に係
  る紛失等の事故防止その他特別積合せ貨物運送を安全かつ確実に実施するため特に必要となる事項に関し適切な計画を有するものであること。

以上のことを要約すると、一般貨物自動車運送事業で求められる許可基準は、「事業の安全性・事業継続性・財産能力の維持・事業内容に即した適切な計画」の4点であることが理解できるのではないでしょうか。

欠格事由

貨物自動車運送事業法より、国土交通大臣は、次に掲げる場合は許可をしてはならないと定めております。

 ① 1年以上の懲役または禁錮の軽に処せられ、その執行の終わり又は執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者。
 ② 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者。
 ③ 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可取り消し処分を逃れるために自主廃業した者が、その廃業のときから

   5年を経過しない者。
 ④ 許可を受けようとするものが法人である場合の役員、親会社・子会社・グループ会社・事業を実質的に支配又は影響力を持つ株

   主、及び申請人が未成年者の場合の法定代理人が、①~③の事由に該当する場合。

申請前に、欠格事由に該当していなる者が居ないかを確認することは重要です。また、欠格事由に対する抜け道はありませんので、もし欠格事由に該当する者が存在する場合は、当該申請で該当する者に代わる人材が確保できるか、又は申請の時期を見直す等の検討が必要となります。


許可申請

各許可要件を満たし、かつ、欠格事由に該当しないことを確認したら指定される申請書類を確認し作成を始めます。実際の申請では、申請書を含むあらかじめ指定された書類及び各許可要件ごとに必要とされる資料の添付をして申請することになります。

⑴ 許可を受けようとするものは、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出します。 
 ① 氏名又は名称及び住所並びに法人である場合に代表者氏名
 ② 営業所の名称及び位置、事業用自動車の概要、特別積合せ貨物運送を行うかどうかの別、貨物自動車利用運送を行うかどうかの別その他国土交通省

  令で定める事項に関する事業計画

⑵ 次のいずれかに該当する場合にあっては、上記⑴の②に掲げる事項のほか、事業計画にそれぞれ次に掲げる事項を併せて記入します。
 ① 特別積合せ貨物運送をしようとする場合
   特別積合せ貨物運送に係る位置、当該事業場の積卸施設の概要、事業用自動車の運行系統及び運行回数その他国土交通省令で定める事項。
 ② 貨物自動車利用運送を行おうとする場合
   業務の範囲その他国土交通省令で定める事項。

⑶ ⑴の申請書には、事業用自動車の運行管理体制その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付します。

審査基準等

一般貨物自動車運送事業の審査基準

 一般貨物自動車運送事業許可では、許可申請において、事業計画による安全性及び継続性が担保されていること、更に、その事業が継続的に遂行できる能力を有していることを証明しなくてはなりません。
 よって、当該許可申請では、このような条件を満たすために、次の11の審査項目を定め、それぞれの項目ごとに評価されることになります。
 当職が当該許可申請の依頼を受任した場合、先ずは、項目ごとの審査基準を満たしているかを確認及び調整作業を行うことからスタートします。

審査項目
  1.営業所          2.車両数    3.事業用自動車   4.車庫       5.休憩・睡眠施設  6.運行管理体制
  7.点検及び整備管理体制   8.資金計画   9.法令遵守    10.損害賠償能力  11.欠格事由

特別積合せ貨物運送の審査基準

 特別積合せ貨物運送は、その安定した運送需要を前提とし、計画的な利用を通して利用者保護及び輸送の安全確保の観点から一定の規制が必要とされております。
 起点及び終点における仕分けの必要性、貨物の取扱量の適性等を総合的に判断し、次の事項を確認することになります。
 1.複数の荷主からの輸送需要がある
 2.定期的運行が必要な程度の運送需要がある
 3.取り扱う荷物の適当なものである
 4.営業所又は荷扱所での仕分け作業が行われる
 5.運行系統が異なる地域の経済的相互間を連結するものである

審査項目
  1.荷扱所     2.積卸施設    3.営業所及び荷扱所の自動車の出入口   4.運行系統及び運行回数  5.積合せ貨物管理体制
  6.運行管理体制

貨物自動車利用運送の審査基準

 他の一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営する者の運送を利用して貨物輸送を行う場合、一般貨物自動車運送事業の審査項目の1~10の各項に加え、次の各項についても審査が行われます。

1.営業所   2.業務範囲   3.保管体制

 

特定貨物自動車運送事業の審査基準

 「特定貨物自動車運送事業」は、単一特定の荷主の需要に応じ、貨物を運送する事業です。そのため、「一般貨物自動車運送事業」ほど多くの規制が設けられているわけではありませんが、それと同様ないし準じた規制が設けられています。

1.運送需要者   2.運送契約期間   3.営業所   4.車両数   5.事業用自動車   6.車庫   7.休憩・睡眠施設
8.運行管理体制  9.点検及び整備管理体制  10.資金計画  11.法令遵守  12.損害賠償能力   13.許可に付する条件

14.貨物利用運送事業  15.その他

  
 

それぞれの事業における審査基準各項目の詳細を、次の「詳しく知りたい」のリンクで説明いたします。

事業許可取得前の行うこと

申請書受付後、管轄運輸支局長から2度目の残高証明書の提出が求められます

事業開始に必要な資金は、当該許可申請から事業開始までの間、常に申請者名義の口座に確保されていることが求められまています。指定された期間内の残高証明書を金融機関で取得して提出をします。

社会保険、労働保険の加入及び36協定の締結

法人の役員や従業員には健康保険、厚生年金、労災保険及び雇用保険(法人の役員は除きます。)に加入させなければなりません。社会保険等に未加入でも事業許可申請を行い許可を得ることができます。しかし、その後の当該加入手続きを得なければ緑ナンバーを取得することはできません。
また、従業員に時間外労働を行わせるには36協定の届出が必要になります。労働組合がある場合はその代表者、労働組合がなければ労働者を代表する者と協定を結び、労働基準監督署へ提出する必要があります。

いずれの手続きも、事業を開始する上では必要な手続きになります。特に、社会保険等の加入手続きにつきましては、緑ナンバー取得の必須条件であり、車両購入後、緑ナンバーを取得してからも事業開始までの間に複数の手続きを要しますので、無駄な時間を掛けず速やかに事業を開始するためにも、役員法令試験に合格後、当該事業許可の通知を得るまでの間で手続きを済ませておくことが必要であると考えます。

事業許可通知から事業開始までの手続き

事業許可を取得後1年以内に当該申請事業を開始する必要があります。
1年という期間は、決して慌てて行う必要のない期間ではあると思います。しかし、「予定していた人材が確保できなかった」等の不測の事態が起こることも想定されます。
計画性をもって、この期間を迎えることが重要であります。

運送事業許可の通知

法令試験に合格をし、申請に対する審査が終了したら営業所を管轄する地方運輸支局から許可取得の通知があります。

その際に、運送事業許可書の交付式が行われる場所・日時の通知がありますので、その指定に基づき、申請者が法人の場合はその役員若しくは運行管理者、個人事業主の場合は事業主が出席するようにしてください。
通常、交付式では、運輸許可書、登録免許税納付書が手渡されるほか、新規許可事業者等講習会が開催され、事業者として遵守すべき法令や、許可取得後に提出する書類の説明を受けます。(注:東京管轄では交付式は行われません。)
今後、事業を行う上で大切な講習となりますので、体調を整えて受講に望んでください。

登録免許税の納付

登録免許税は12万円です。
交付式で交付された登録免許税納付書を、指定される銀行か郵便局に提出して納付をします。納付期限が許可取得日から1ヶ月以内と定められていますので、許可取得後最初に行う手続きであると意識付けをしてください。
なお、コンビニでは納付ができませんのでご注意ください。

運行管理者・整備管理者選任届の提出

当該事業許可申請の際、提出書類の「事業用自動車の運行管理及び整備管理の体制」の中で、運行管理者及び整備管理者の指定は行いますが、ここでは正式に選任した旨の届出を行うことになります。
通常は、あらかじめ用意をして交付式の当日に届出を済ませてしまいます。提出先は、千葉運輸支局では「保安担当」となり、申請書提出先の「輸送担当」とは異なりますのでご注意ください。

提出書類は選任届出の他、次の書類の提出が必要となります。

運行管理者
 ・運行管理者資格者証の写し

整備管理者(整備士有資格者)
 ・自動車整備士技能検定合格証の写し
 ・整備管理者本人の同意書(整備管理者選任届出書に添付する書面)

整備管理者(整備士の資格なし)
 ・整備管理者選任前研修終了証明書の写し
 ・実務経験証明書(2年以上)
 ・整備管理者本人の同意書(整備管理者選任届出書に添付する書面)

・運輸開始前確認の報告

運行管理者・整備管理者の届出が完了後、運送開始前確認を営業所を管轄する地方運輸支局の輸送部門に本報告書を提出することになります。
当該確認の報告が完了しないと、緑ナンバー取得のための「事業用自動車等連絡書」の発行が得られません。大切な手続きとなるだけにしっかりした準備が必要となります。
また、本確認の添付資料として、社会保険等に加入したことが確認できる証明書及び36協定書の写しが必要となります。社会保険等の加入手続きを事前に行うことで許可通知から事業開始までの手続きを速やかに行われることになります。
事業許可の通知が予測できる段階で次の準備を行うことが重要となります。

運輸開始前確認に添付される書類
 ・運行管理者・整備管理者選任届の写し
 ・選任運転者の運転免許証の写し
 ・労働保険/保険関係成立届の写し、(健康保険、厚生年金保険)新規適用届の写し等、社会保険等に加入した人数がわかるもの
 ・営業所等について事業遂行上適切な施設であることがわかる写真(ただし、許可申請時に提出していて、変更が無い場合は不要となります。)

・車両登録(緑ナンバー取得)

運輸開始前確認報告が完了すると「事業用自動車等連絡書」が発行されます。
この「連絡書」が通常の自動車登録に必要となる車庫証明書の役割を持つことになり、「連絡書」に必要事項を記入し、添付を要する書類とともに営業所を管轄する運輸支局の輸送部門窓口に提出することにより「緑ナンバーの交付」を得ることになります。

提出が必要となる書類
 ・事業用自動車等連絡書(2通)
 ・手数料納付書
 ・新車の場合は諸元表、中古車の場合は自動車検査証(車検証)の写し

事業用自動車に緑ナンバーの取付けが完了したら、自動車任意保険に加入してください。自動車任意保険の加入には、事業許可で求められる保険契約の内容に必要最低基準が設けられています。事業許可申請時に報告されている通りの補償内容で加入されるようにしてください。

運輸開始届及び運賃料金設定届の提出

いよいよ運輸開始前最後の届出となります。

次の書類を「運輸開始届出書」に添付して提出をします。
 ・事業用自動車の車検証の写し(緑ナンバー取得後のもの。)
 ・任意保険の保険証

また、通常、「運輸開始届出書」と同時に、次の書類を添付して「運賃料金設定届」を提出することになります。
 ・運賃料金の適用方(運賃料金表)

ここまでの手続きを経て運輸事業が開始されることになります

巡回指導・監査

新規許可事業者に対しては、運輸開始後、概ね1ヶ月~3ヶ月以内で「適正化実施機関による巡回指導」が実施されます。

通常は、実施日が決まると、実施日の2~3週間前に実施機関より案内文書が申請書記載の営業所宛てに郵送されることになります。
巡回指導は、指導員2名が営業所を訪問し、運送事業法令に則った適性運営がされているかの確認を、1~2時間程で実施されます。

巡回指導の結果は、A・B・Ⅽ・Ⅾ・E の5段階で評価されます。
初回の巡回指導で「A」判定を取得した運送会社は、その後、2~3年に1度のペースで巡回指導が行われます。
しかし、当該巡回指導で、「D若しくはE」判定を受けてしまうと「重点事業者」となってしまい、指導員より指摘を受けた事項について期限を定めて改善報告を行うよう指示を受け、更に、6か月後に実施される巡回指導の中で、報告された内容に問題が無いかの確認を含む、法令遵守体制の問題の有無を帳票類等で確認作業が行われることになります。

適正化実施機関により実施される「巡回指導」とは別に、国土交通省(運輸局や運輸支局)により実施される「監査」を受けることが有ります。
「監査」が実施されるケースとして、「重大な事故を起こしたとき」、「巡回指導によって悪質な法令違反が発見されたとき」、「法令違反の疑いがある等の通報があったとき」などによって実施されることになります。
また、「監査」は、巡回指導とは違い、突然に監査官がやってきて実施されたり、日時を指定して運輸局窓口に呼び出される等の方法で行われ、実施方法によっては、1日では終わらず監査官が納得するまで数日間に渡って実施されることがあります。
もし、監査の結果、問題があるとの指摘を受けた場合、改善報告の指示を受けるとともに、行政処分としてナンバーを取り上げられ車両が使用できなくなる期間が生じたり、更に悪質と判断された場合は、営業停止処分や許可取り消し等の処分を受ける可能性が有ります。

事業開始後に行うべき手続き

貨物自動車運送事業許可には有効期限がありません。よって、更新手続きを行うことなく事業を続けることができます。
(ただし、欠格事由に該当する等、許可基準を満たさない事由が発生しますと事業を続けることができなくなりますので注意が必要です。)
しかし、事業開始後も、様々な面で官公署等に提出しなければならない書類があり、もしその提出を怠ってしまった場合には、行政処分等の不利益を課せられることになります。

手続きを要する提出物、及び管理に資する台帳等を時系列で整備・保存されることが必要です。

事業開始後に手続きを要する主な事例

毎年定期的にに提出を要するもの

 ● 事業報告書・・・・・・・・・・・・・・毎事業年度経過後(決算後)100日以内に提出
 ●事業実績報告書(輸送実績報告書) ・・・毎年7月10迄に提出

事業計画変更により認可を受けなければならないもの

 ●営業所の新設・・・・・・・・公示基準を満たすことが新設の条件
                車両配置の移転を伴う場合の車検証の書換(変更登録)
                 (管轄する運輸事務所が変わる場合、ナンバー変更登録及び自動車任意保険契約内容変更手続きを要する)
                運行管理者・整備管理者等の設置
 ●車庫の増設・廃止・・・・・・車庫の設置基準を満たすことが条件
                 (営業所との距離、全登録車両保管可能面積確保、前面道路車両制限令に適合、土地利用の関係法令に適合 等)
 ●車庫面積の変更・・・・・・・公示基準を満たすことが条件
 ●休憩・睡眠施設の変更・・・・営業所又は車庫に併設されていることが条件            

変更により届出を要するもの

 ●営業所の名称変更
 ●事業用自動車の増車・減車・・・・・・・・・事前に届出を要する
                       増車の場合は、運行管理者設置人数基準、運転者人数基準を確認
                       自動車任意保険の契約内容変更(新規加入)手続きを要する
 ●運行管理者・整備管理者の選任、解除・・・・選任、解除のときから15日以内に届出
 ●役員の変更・・・・・・・・・・・・・・・・欠格要件に該当しないことを確認して選任

上記案内の他にも、本社移転、社名変更等を原因として、事業用自動車の車検証の書換を要することになります。その際、ナンバー変更を要する場合は、該当車両を管轄運輸支局に持込み封印の打刻を受ける必要があり、手間と労力を要することになります。
(当事務所では、運輸局より出張封印の認可を得ているため、一部のケースを除き車両を持込むことなくナンバー変更登録を行うことも可能です。)

事業を継続する過程で何らかの変更を要する事はよくある事です。変更等が生じた場合、どのような手続きが必要であるのかを整理しておくことが必要となります。

まとめ

これから事業を始めようとする方は、事業開始の準備、事業開始からの体制づくり、事業を軌道に乗せるまでの青写真づくりと何かと気がかりな点が多いのではないでしょうか。しかし、実際には「貨物自動車運送事業を始めたい、でも、何から始めればよいか判らない」、そんなことで悩まれる方は多いのではないかと思われます。

これまでの案内からもお分かりいただけたかと思いますが、事業許可申請から事業開始までに多くの申請・届出を要し、さらに事業を開始してからも定期的な報告事項等の届出が義務付けられています。また、運送事業者は、常に安全かつ確実な輸送業務の実現に資し、高い法令順守及び健全経営に努めることが求められております。 

運送事業に係る許可申請は、行政書士が扱う申請業務の中でも難解業務の一つであり、手間と時間がかかるだけでなく、細かい法令に気を配りながら一つひとつ丁寧に申請の準備を進めなければなりません。
行政書士が事業開始の過程でお手伝いできることは限定されているかと思います。しかしながら、行政書士が当該開業にあたっての使命には大きなものがあると感じております。
当事務所では、受任頂いた業務を進める過程でいくつかの打ち合わせを持ちながら、親切丁寧に務めて参ります。
先ずはお気軽にご相談いただけますようお願い申し上げます。