一般貸切旅客自動車運送事業の許可

一般貸切旅客自動車運送事業許可は、一般的に「観光バス」事業を始めるために必要となる各許可要件の基準を理解することになります。また、各許可要件を理解する上で、各種関係法令の理解が求められるだけでなく、大型観光バスを複数台数確保しなければならず、事業を開始までに求められる多額の自己資金を用意する必要があり、更に、当該申請業務に着手してから事業が開始されるまでに一定の期間を要することからも、計画的に事業開始までの準備が必要となります。
通常、順調に手続きが進み許可が取得されたとしても、事業が開始されるまでには6か月以上の期間を要し、営業所や車庫等の許可基準を満たさず補正に応じるようなことがあれば更にその期間は延長されることになり、許可申請の着手から事業開始まで1年を要したという事はよく聞く話であります。
無駄な時間を掛けず、速やかに事業を開始するには、申請の許可基準を理解し、適正な事前準備を整えて申請に望まれることが鍵となってまいります。


申請依頼から事業営業までの流れ

(申請前準備期間)
 1.業務受任
 2.審査基準の確認・適合調整
 3.申請書作成・ご用意いただく書類のご依頼

(申請後審査期間)
 4.営業所の所在地を管轄する運輸支局に申請書を提出
 5.役員法令試験の受験(毎月の実施、2回まで受験可)→合格
 6.運輸局で書類審査(標準処理期間は3~5ヶ月)
 7.許可処分の通知(許可処分の通知は、通常は電話で行われ、同時に許可証交付式の日時が案内されます。)

(許可通知から事業開始までの期間)
 8.運輸局による申請者の事務所及び駐車場の現地調査(申請者は同席を求められます。)
 9.一般貸切旅客自動車運送事業許可証交付(式
(当日は指導講習が行われますので、申請者若しくは法人の場合の担当役員が出席します。)
10.登録免許税(9万円)の納付 
11.安全管理規程の作成・届出
12.安全統括管理者の選任・届出
 
13.運賃料金設定届及び運行管理者・整備管理者選任届

14.事業用自動車等移動連絡書交付
15.車両登録(緑ナンバー取得)
16.運輸事業(営業)開始(許可後6ヶ月以内に営業開始が義務付けられ、開始後遅滞なく運輸開始届を提出)(※2)

(事業開始後)
17.巡回指導(事業開始届の提出後、1~3ヶ月後に「適正化実施機関」により巡回指導が実施されます)

その他、社内での運行準備作業

任意保険の加入
点呼記録簿等の帳票類の準備
運賃料金、運送約款、看板等の掲示
 (自社独自の約款を作成した場合は、事前に約款の認可申請を要しますが、標準運送約款を適用する場合は、認可申請は不要となります。)
安全管理規程、運行管理規程、整備管理規程の作成
就業規則、36協定の作成・届出
社会保険、労働保険の加入手続き
運転者適性診断の受診
新任運転者への指導教育の実施
健康診断の受診

上記からも、申請開始から様々な申請・認可及び届出、更に事前準備作業を要することが理解できると思います。
短期間で事業開始を実現させるポイントは、「しっかりした事前準備」にあります。
「関係法令を十分に理解し設備及び事業に関わる人の確保」、「漏れのない申請書の作成・提出」、そして、事業開始までに必要となる手続きを時系列に整理し、出来ることから順に事前準備されることが重要です。

そして、忘れてはならないことが、事業開始までには多額の資金確保を要することです。
土地や事務所、そして事業用自動車の確保に多くの資金が投入されます。それだけではありません。事業を動かすには多くの人材の確保が必要です。そして、事業の開始が遅れれば、それだけ資金を回収する術も遅れることになります。

運送事業許可申請は非常に難解な手続きでもあります。少しでも不安を感じる様であれば、専門家でもある行政書士にお尋ねください。

役員の法令試験

法令試験は、新規許可の申請に係る試験(原則、毎月実施。)と、更新許可の申請に係る試験(原則、許可の有効期間の満了日を含む月に実施。)があります。
とちらも、具体的な試験日、実施場所等の指定は、試験実施日の7日前までに、申請会社の登記簿上の本店住所あてに通知されます。

受験者の範囲は、一般貸切旅客自動車運送事業の許可申請者本人です。具体的には、株式会社の場合は、代表権を有する常勤役員になり、1社あたり1名のみ受験ができます。
また、運行管理責任者資格を有する役員であっても、役員法令試験を免除することはできず、当該許可取得には必ず合格することが条件となります。

試験可能回数は2回までです。最初の受験で不合格となった場合は、翌月に行われる試験に再試験できます。なお、事前に欠席の連絡もなく、試験に欠席した者は、当該試験は不合格として取り扱われます。
1⃣ 新規許可申請等に係る再試験でも不合格判定を受けた場合は、当該申請は却下処分となります。
 通常、再試験でも不合格判定を受けた場合は、当該申請は「取り下げ」をし、改めて再申請を行うことが一般的です。
2⃣ 事業許可更新申請に係る再試験でも不合格であった者は、「基礎講習」を修了するごとに1回の試験機会が与えられます。
 また、事業許可更新申請に係る者は、再試験不合格の日から1年後の日が含まれる月に実施される試験期日まで繰り返し行うことができるものとし、当
 該期日までに合格しなかった場合は、速やかに不許可処分の手続きが行われることになります。
 なお、基礎講習の終了については、基礎講習実施者が終了した旨を証明した運行管理者等指導講習手帳又は実施者が交付する終了証明書の提示によって
 行われますので、当該終了した者は、速やかに同手帳の写し又は同修了証明書の写しを郵送又は持参によるり提出する必要があります。

初回の法令試験実施日時点において、公益社団法人日本バス協会の実施する貸切バス事業者安全性評価認定制度において一ツ星以上を取得している事業者は、当該試験は免除されます。

出題方式:〇✕方式、語群選択方式及び記述式
出題数・試験時間:40問・60分
合格基準:9割以上(36問以上)の正解率で合格
出題範囲

 1.道路運送法関係
   ① 道路運送法
   ② 道路運送法施行令
   ③ 道路運送法施行規則
   ④ 旅客自動車運送事業運輸規則
   ⑤ 旅客自動車運送事業等報告規則
   ⑥ 自動車事故報告規則
   ⑦ 一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款

 2.道路運送車両法関係
   ⑧ 道路運送車両法
   ⑨ 道路運送車両法施行令
   ⑩ 道路運送車両法施行規則
   ⑪ 道路運送車両の保安基準

 3.一般旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令
   ⑫ 「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン」
   ⑬ 「旅客自動車運送事業運輸規則第47条の7第1項の規定に基づき、旅客自動車運送事業者が公表すべき輸送の安全にかかわる事項等」

   ⑭ 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
   ⑮ 「輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドライン」
   ⑯ その他一般旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令等

試験時においては、次の書籍等の持込が可能となります。
 「自動車六法」
 「旅客自動車運送事業等通達集」
 「自動車運転者の労働時間等のための基準」
 「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン」
 「旅客自動車運送事業運輸規則第47条の7第1項の規定に基づき、旅客自動車運送事業者が公表すべき輸送の安全にかかわる事項等」
なお、過去3年分の試験問題及び正答は、関東運輸局のHPより確認することができますので、試験対策にご利用できるかと思います。


許可申請

各許可要件を満たし、かつ、欠格事由に該当しないことを確認したら指定される申請書類を確認し作成を始めます。実際の申請では、申請書を含むあらかじめ指定された書類及び各許可要件ごとに必要とされる資料の添付をして申請することになります。

⑴ 許可を受けようとするものは、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出します。 
 ① 氏名又は名称及び住所並びに法人である場合に代表者氏名
 ② 経営しようとする一般旅客自動車運送事業の種別(一般貸切旅客自動車運送事業)
 ③ 許可に条件を付することを前提とした場合は、その条件
   (例:車椅子の乗降装置、車椅子固定設備等を装着した車両を使用して旅客を運送する業務に限る。等)
 ④ 事業計画及び事業施設の概

⑵ ⑴の申請書には、事業用自動車の運行管理体制その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付します。

審査基準等

一般貸切旅客自動車運送事業の新規取得における審査基準

 一般貸切旅客自動車運送事業許可での申請では、次の14の審査項目より定められた基準を満たすことにより、事業の安全性及び継続性が担保されるとともに、更に、その事業が継続的に遂行できる能力を有していることが証明されてまいります。
 当職が当該許可申請の依頼を受任した場合、先ずは、項目ごとの審査基準を満たしているかを確認及び調整作業を行うことからスタートします。

審査項目
  1.営業区域     2.営業所     3.事業用自動車    4.車両数     5.自動車車庫  6.休憩、仮眠又は睡眠の施設
  7.管理運営体制   8.運転者   9.安全投資計画   10.事業収支見積書   11.資金計画    12.法令遵守

  13.損害賠償能力   14.その他添付を要する資料

それぞれの事業における審査基準各項目の詳細を、次の「詳しく知りたい」のリンクで説明いたします。

事業許可通知から事業開始までの手続き

事業許可を取得後6ヶ月以内に当該申請事業を開始する必要があります。
一般貸切旅客自動車運送事業では事業許可取得後事業開始までに準備しなければならないことが多数ありますので、許可取得後もあわただしい6ヶ月を過ごすことになると思います。そのためにも、予め許可取得前にできる準備をされておくことをお勧めいたします。
「予定していた人材が確保できなかった」等の不測の事態が起こることが無いように早めに人選されるようにしてください。特に、運転手には対しては、「運転者適性診断」、「健康診断」、「新任運転者への指導教育」等を実施しなければなりません。人選だけでなく、上記受診の日程調整も許可取得前にされておくとよいでしょう。
また、社会保険・労働保険の加入手続き、就業規則・36協定の作成・届出、更に各種規程の作成等も事前に準備できることでもあります。
計画性をもって、この期間を迎えることが重要であります。

運送事業許可の通知

法令試験に合格をし、申請に対する審査が終了したら営業所を管轄する地方運輸支局から許可取得の通知があります。

その際に、運送事業許可書の交付式が行われる場所・日時の通知がありますので、その指定に基づき、申請者が法人の場合は担当する役員、個人事業主の場合は事業主が出席するようにしてください。
通常、交付式では、運輸許可書、登録免許税納付書が手渡されるほか、新規許可事業者等講習会が開催され、事業者として遵守すべき法令や、許可取得後に提出する書類の説明を受けます。
今後、事業を行う上で大切な講習となりますので、体調を整えて受講に望んでください。

登録免許税の納付

登録免許税は9万円です。
交付式で交付された登録免許税納付書を、指定される銀行か郵便局に提出して納付をします。納付期限が許可取得日から1ヶ月以内と定められていますので、許可取得後最初に行う手続きであると意識付けをしてください。
なお、コンビニでは納付ができませんのでご注意ください。

安全管理規程・安全統括管理者選任の届出

運輸事業者が、経営トップから現場まで一体となって安全管理体制を構築することを目的とした運輸安全マネジメント制度が平成18年10月より始まり、平成24年4月に起きた関越自動車道高速ツアーバス事故をきっかけに、平成25年10月より、「全ての貸切バス事業者」及び「貸切委託運行許可を得た乗合バス事業者」に、「安全管理規程の届出」と共に、遅滞なく「安全統括管理責任者の届出」が義務付けられまております。

安全管理規程の記載内容
 輸送の安全の確保のための基本的な方針、実施計画、管理体制等に関する事項を規定する必要があります。

安全統括管理者
 事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあり、かつ、運行の安全確保に関する業務、点検・整備の管理に関する業務又はこれらの業務を管理す
 る業務について3年以上従事した経験を有する者から選任しなければなりません。

運賃料金設定の届出及び運行管理者・整備管理者選任届の提出

運賃料金の設定・変更については、道路運送法より、「一般貸切旅客自動車運送事業者は、旅客及び料金を定め、あらかじめ、国土交通大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも同様とする。」と定められております。
その運賃・料金設定にも、各地方運輸局長が設定する下限額以上であることが求められ、更に、安全コストが反映された合理的でわかり易い時間・キロ併用運賃方式の導入が求められます。また、国土交通大臣は、届出のあった運賃料金について、各種条件を懸案して変更命令を行うことができます。

当該事業許可申請の際、提出書類の「事業用自動車の運行管理及び整備管理の体制」の中で、運行管理者及び整備管理者の指定は行いますが、ここでは正式に選任した旨の届出を行うことになります。
通常は、あらかじめ交付式当日までに用意をして、交付式の当日に届出を済ませてしまいます。

提出書類は選任届出の他、次の書類の提出が必要となります。

運行管理者
 ・運行管理者資格者証の写し

整備管理者(整備士有資格者)
 ・自動車整備士技能検定合格証の写し
 ・整備管理者本人の同意書(整備管理者選任届出書に添付する書面)

整備管理者(整備士の資格なし)
 ・整備管理者選任前研修終了証明書の写し
 ・実務経験証明書(2年以上)
 ・整備管理者本人の同意書(整備管理者選任届出書に添付する書面)

・車両登録(緑ナンバー取得)

運賃料金設定届と運航管理者・整備管理者選任届が行われるとと「事業用自動車等連絡書」が発行されます。
この「連絡書」が通常の自動車登録に必要となる車庫証明書の役割を持つことになり、「連絡書」に必要事項を記入し、添付を要する書類とともに営業所を管轄する運輸支局の輸送部門窓口に提出することにより「緑ナンバーの交付」を得ることになります。

提出が必要となる書類
 ・事業用自動車等連絡書(2通)
 ・手数料納付書
 ・新車の場合は諸元表、中古車の場合は自動車検査証(車検証)の写し

事業用自動車に緑ナンバーの取付けが完了したら、自動車任意保険に加入してください。自動車任意保険の加入には、事業許可で求められる保険契約の内容に必要最低基準が設けられています。事業許可申請時に報告されている通りの補償内容で加入されるようにしてください。

運輸開始届及び運賃料金設定届の提出

全ての準備が整う整いましたら運輸事業が開始されますが、最後に残された届け出が運輸開始届になります。また、その提出期限は、実際に運輸事業が開始されてから30日以内に次の書類をまとめて届をしなければなりません。

次の書類を「運輸開始届出書」に添付して提出をします。
 ・自主点検票
 ・事業用自動車の車検証の写し(緑ナンバー取得後のもの。)
 ・任意保険の保険証の写し
 ・事業用施設の写真
   営業所:全景及び内部、点呼執行場所、運賃料金・運送約款の掲示状況
   自動車車庫:全景及び道路出入口付近状況
   事業用自動車:使用者の指名・名称、記号
   休憩仮眠施設
 ・運行管理者(補助者)選任届の写し
 ・整備管理者選任届の写し
 ・事業用自動車の点検整備記録簿の写し(中古車両を事業用として使用する場合)
 ・健康保険・厚生年金保険新規適用届の写し及び労働保険・保険関係成立届の写し
 ・PC設置の写真及びメールアドレスを記載した書面

巡回指導・監査

旅客事業開始後、毎年度1回の「適正化実施機関による巡回指導」が実施されます。
(貸切バス事業者安全性評価認定及び運輸マネジメント評価等により「優良」と認められた事業者については、最大で「2年間で1回の実施」とする軽減措置が取られます。)

通常は、実施日が決まると、実施日の2~3週間前に実施機関より案内文書が申請書記載の営業所宛てに郵送されることになります。
巡回指導は、指導員2名が営業所を訪問し、運送事業法令に則った適性運営がされているかの確認を、1~2時間程で実施されます。

巡回指導の結果は、各項目別に「適・否」の判定が行われ、全項目に占める「適」の割合により。A・B・Ⅽ・Ⅾ・E の5段階で評価されます。
また、「否」の判定を受けた項目については、巡回指導の翌日から原則30日以内に、当項目に係る関係書類を提出することにより、その改善状況を適正化機関に報告するように指導されます。

適正化実施機関により実施される「巡回指導」とは別に、国土交通省(運輸局や運輸支局)により実施される「監査」を受けることが有ります。
「監査」が実施されるケースとして、「重大な事故を起こしたとき」、「巡回指導によって悪質な法令違反が発見されたとき」、「法令違反の疑いがある等の通報があったとき」、更に「正当な理由なく巡回指導を拒否したとき」などにより実施されることになります。
また、「監査」は、巡回指導とは違い、突然に監査官がやってきて実施されたり、日時を指定して運輸局窓口に呼び出される等の方法で行われ、実施方法によっては、1日では終わらず監査官が納得するまで数日間に渡って実施されることがあります。
もし、監査の結果、問題があるとの指摘を受けた場合、改善報告の指示を受けるとともに、行政処分としてナンバーを取り上げられ車両が使用できなくなる期間が生じたり、更に悪質と判断された場合は、営業停止処分や許可取り消し等の処分を受ける可能性が有ります。

事業開始後に行うべき手続き

事業開始後においても、事業報告や事業計画の変更等による様々な面で官公署等に対し認可申請、届出等を行うことが求められます。もしその提出を怠ってしまった場合には、行政処分等の不利益を課せられることになります。

事業開始後に手続きを要する主な事例

毎年定期的にに提出を要するもの

 ● 事業概況報告書・・・・・・・・・・・・毎事業年度経過後(決算後)100日以内に提出
 ●事業実績報告書(輸送実績報告書) ・・・毎年5月31迄に提出

事業計画変更により認可を受けなければならないもの

 ●営業所の新設・・・・・・・・公示基準を満たすことが新設の条件
                車両配置の移転を伴う場合の車検証の書換(変更登録)
                 (管轄する運輸事務所が変わる場合、ナンバー変更登録及び自動車任意保険契約内容変更手続きを要する)
                運行管理者・整備管理者等の設置
 ●車庫の増設・廃止・・・・・・車庫の設置基準を満たすことが条件
                 (営業所との距離、全登録車両保管可能面積確保、前面道路車両制限令に適合、土地利用の関係法令に適合 等)
 ●車庫面積の変更・・・・・・・公示基準を満たすことが条件
 ●休憩・睡眠施設の変更・・・・営業所又は車庫に併設されていることが条件            

変更により届出を要するもの

 ●営業所の名称変更
 ●事業用自動車の増車・減車・・・・・・・・・事前に届出を要する
                       増車の場合は、運行管理者設置人数基準、運転者人数基準を確認
                       自動車任意保険の契約内容変更(新規加入)手続きを要する
 ●運行管理者・整備管理者の選任、解除・・・・選任、解除のときから15日以内に届出
 ●役員の変更・・・・・・・・・・・・・・・・欠格要件に該当しないことを確認して選任

上記案内の他にも、本社移転、社名変更等を原因として、事業用自動車の車検証の書換を要することになります。その際にナンバー変更を要する場合は、該当車両を管轄運輸支局に持込み封印の打刻を受ける必要があり、手間と労力を要することになります。
(当事務所では、運輸局より出張封印の認可を得ているため、一部のケースを除き車両を持込むことなくナンバー変更登録を行うことも可能です。)

事業を継続する過程で何らかの変更を要する事はよくある事です。変更等が生じた場合、どのような手続きが必要であるのかを整理しておくことが必要となります。


貸切バス事業許可更新制度

平成28年に起きた痛ましい事故をきっかけに、不適格事業者の排除や運転者への安全教育の実施等、事業者における安全対策が徹底されることを目的として事業許可更新制度が導入されることになりました。
事業許可期間は更新日から5年となりますので、その期間を経過する2~4か月前までに更新手続きを行わなければなりません。
もし、更新を忘れてしまいその期間が経過されますとその失念に対する救済方法は一切ありませんので、事業許可は自動的に失効となり期間経過後の事業を行うことができなくなります。
その後においても事業の継続を希望されるのであれば再度新規申請手続きを行い、新たな事業許可を取得する必要があります。非常に時間と労力を要することになり、もちろん、事業許可が取得されるまでは輸送事業を行うことはできませんので更新期間に受けて中止して管理するとともに、事前に準備を心がけることが重要となります。

具体的には、許可期限満了日により次のように更新時期が定められております。

許可期限満了日申請時期
4月1日から6月30日まで同年2月中
7月1日から9月30日まで同年5月中
10月1日から12月31日まで同年8月中
1月1日から3月31日まで前年11月中

事業許可更新基準
事業許可更新申請においては、次の基準を満たす必要があります。
  ・財務状況が赤字ではない
  ・法令試験の合格をしている
  ・不適業者となる行政処分を受けていない

更新申請で提出を求められる書類
更新許可申請では、「一般貸切旅客自動車運送事業 更新許可申請書」に次の書類を添付して申請します。
 ●輸送の安全を確保するための投資内容を定めた計画「安全投資計画」
   ・「輸送に係る安全管理体制の確保に関する事項」
   ・「事業用自動車の取得(安全装置を含む)並びに点検及び整備に関する事項」
   ・「その他投資の内容として必要な事項」
   これらの事項を記した計画書の作成・提出が求められます。

 ●「事業収支見積書」
   「安全投資計画」に従って事業を遂行することができる十分な経理的基礎を有することの証として「事業収支見積書」の提出が求められます。
   もちろん、ただ提出すればよいというものではなく、収支においてマイナスが無いことが重要となります。

 ●「安全投資状況等報告書」
  具体的には次の報告書を提出することになります。
   ★安全投資実績
   ★事業収支実績報告書
   ★貸借対照表
   ★損益計算書
   ★社会保険の納入を証明する書面
   ★労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書
   ★事業者の中で給与が最も低い運転者の支払賃金の内訳が分る書面及び当該運転者の賃金台帳等

事業許可更新時に求められる審査基準
一般貸切旅客自動車運送事業では、許可取得後5年ごとに事業許可の更新が求められ、更新申請では、次の項目で審査が行われます。 

審査項目
  1.営業区域    2.営業所    3.事業用自動車    4.車両数    5.自動車車庫    6.休憩、仮眠又は睡眠施設

  7.管理運営体制   8.運転手    9.安全投資計画    10.事業収支見積書    12.法令遵守    13.損害賠償能力

注:1.貸切バス事業者安全性評価認定制度により一ツ星以上を取得している事業者については、「12.法令遵守」で求める「申請者又は法人の代表権
    を有する常勤役員が必要とする法令知識」を取得されているものとして、その取扱を行います。
  2.「9.安全投資計画」及び「10.事業収支見積書」に加え、「㋑ . 安全投資実績」及び「㋺ . 事業収支実績報告書」の提出を行います。
    なお、㋺については、専門的知見を有する者から見て、適切なものでなければなりません。
  3.事業許可更新申請では、以下のいずれにも該当しないことが求められます。
   ❶ 許可を申請する年の直近1事業年度において事業者の財務状況が債務超過であり、かつ直近3事業年度の収支が連続で赤字である。
     ただし、親会社等からの融資が確実に得られること等事業継続のための支援の受領が客観的に説明される場合はこの限りではありません。
   ❷ 最低賃金法に基づく水準未満の賃金が支払われている。
   ❸ 前回の許可期限満了日の翌日から更新申請時までの間に毎年連続して、道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及
    び、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の違反による輸送施設の使用停止以
    上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けている。
   ❹ 前回の許可期限満了日の翌日から更新申請時までの間に、道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法及び、特定地域
    及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の違反による輸送施設の使用停止以上の処分又は
    使用制限(禁止)の処分を受けた場合であって、更新許可申請時まで「輸送安全マネジメント評価」を受けて

「貸切バス事業者安全性評価制度」

観光バスのサービスを受ける利用者や旅行会社にとって、個々の貸切バス事業者の安全性への取り組みが見極めづらいことがあり、安全性が十分に考慮されていない貸切バス事業者を選択されるケースが有ります。
そんな中、2007年2月に大阪府吹田市で発生した貸切バスによる重大事故を契機に、「決して運賃の高低だけではなく安全に対する取組みも評価の対象にした、貸切バス事業者の選択ができる仕組みを構築させるべきである。」との提言を受け、2011年度から「貸切バス事業者安全性評価認定制度」の運用が開始されました。

一ツ星以上の認定を獲得することで、事業更新許可申請の際に求められる法令試験が免除されることになります。

事業者のとって事業者認定を取得することにより、利用者や旅行会社から高い評価を獲得するだけでなく、事業更新申請において法令試験が免除されることにより、より事業経営に集中できる等のメリットが多い制度でもあります。
是非、事業者認定の獲得を積極的に検討してみて下さい。


評価認定制度の概要
● 評価認定の対象・・・貸切バス事業者の申請に基づき行う任意制度であり、法人単位で評価が行われます。
             バス協会の非会員事業者も評価認定の対象となります。
● 申請条件・・・・・・次の条件をすべて満たしていることが必要となります。
            ①事業許可取得後3年以上経過していること。
            ②法令遵守事項に関する違反がないこと。
            ③過去2年間に、「死者を生じた事故」が発生していないこと。
            ④過去1年間に、有責の第一当事者となる「重傷者を生じた事故」が発生していないこと。
            ⑤過去1年間に、有責の第一当事者となる「10人以上の負傷者を生じた事故」が発生していないこと。
            ⑥過去1年間に、有責の第一当事者となる「転覆等の事故」又は「悪質違反による運行」が発生していないこと。
            ⑦過去1年間に、1営業所当たり50日車を超える行政処分を受けていないこと。
            ⑧過去の認定取消を受けた際の欠格期間に該当しないこと。

● 評価認定の方法・・・次の項目について、日本バス協会による書類及び訪問審査を行い、有識者等により構成された「貸切バス事業者安全性評価認定
            委員会」による審議を経て、認定事業者が決定されます。

            また、認定を受けるためには、次の各評価項目を点数化しその合計点を100点とし、算出された評価点が60点以上である
            ことが求められます。
            ①安全性に対する取組状況
              ・運行管理者に所定の講習を受講させているか
              ・アルコールチェッカーを使用して厳正に点呼を実施しているか
              ・ドライブレコーダを導入し教育・指導を行っているか  等が審査されます
            ②事故及び行政処分の状況
              申請条件の③~⑥に該当する場合には申請ができません
            ③運輸安全マネジメントの取組状況
              「P D C A (※)サイクルによる安全管理体制の継続的改善」、「輸送の安全に係る情報の公表」について、それぞれの取

              り組みが適切に実施されているかを審査
              ※ Plan:安全管理体制の構築  Do:安全管理体制の実施  Check:安全管理体制のチェック  Act:安全管理体制の見直し・改善

●認定種別・・・・・・・認定種別は、「一ツ星・二ツ星・三ツ星」の3種類で、上記評価認定の際に取得した評価点によりその種類が決定します。
            ※ ❶新規申請の場合は、60点以上で認定され、全ての事業者が「一ツ星」となり、二ツ星、三ツ星の認定を取得することはりません。
              ❷初めての更新申請では、獲得評価点数により一ツ星又は二ツ星」のいずれかに認定をされ、三ツ星認定を取得することはありません。
●認定期間・・・・・・・2年間として、2年に1回の更新申請が必要となります。
            ただし、三ツ星認定事業者が更新の際の審査で90点以上得点を獲得した場合は、2年後の更新を免除され、4年後の更新とな
            ります。

まとめ

これから事業を始めようとする方は、事業開始の準備、事業開始からの体制づくり、事業を軌道に乗せるまでの青写真づくりと何かと気がかりな点が多いのではないでしょうか。しかし、実際には「バス事業を始めたい、でも、何から始めればよいか判らない」、そんなことで悩まれる方は多いのではないかと思われます。

これまでの案内からもお分かりいただけたかと思いますが、事業許可申請から事業開始までに多くの申請・届出を要し、さらに事業を開始してからも定期的な報告事項等の届出が義務付けられています。また、運送事業者は、常に安全かつ確実な輸送業務の実現に資し、高い法令順守及び健全経営に努めることが求められております。 

運送事業に係る許可申請は、行政書士が扱う申請業務の中でも難易度の高い業務の一つであり、手間と時間がかかるだけでなく、細かい法令に気を配りながら一つひとつ丁寧に申請の準備を進めなければなりません。
行政書士が事業開始申請の過程で適切なアドバイスを行います。

いたずらに時間をかける前にお気軽にご相談ください。