運行管理者

自動車運送事業では、事故防止に努めることにより、安全かつ効率的な輸送に資することが求められております。
そこで自動車運送事業者には、常勤の運行管理者の設置が求められ、運行管理者には重大な事故が起こらないよう、安全体制を整備・管理し、ドライバー一人ひとりが安全に運行業務が行えるよう指導・監督を行う優れた能力を有する者の配置が求められております。

運行管理者には、自動車運送事業の種別に応じた「運行管理者資格者証」の交付を受けた者の常勤が求められ、更に、法令より、保有車両数に応じた人数の運行管理者を確保することが求められております。

運行管理体制の確保は、運送事業における重要な許可要件でもあります。次の事項を確認し、適正な人員の確保に努めてください。

運行管理者の資格要件

一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全を確保を目的とし、国土交通省令で定めるところにより、次のいずれかに該当する運行管理者証の交付を受けている者に、その業務を行わせなければなりません。
① 運行管理者試験に合格した者(試験による方法)
② 5年以上の一般貨物自動車運送事業の運行管理の実務経験を有し、かつ、その期間内に、認定を受けた講習機関が実施する一般講習又は基礎講習
  5回以上受講している者
(実務経験などによる方法)

運行管理者の業務

事業用自動車の運行安全確保のため、運行管理者の職務及び権限として次の事項による業務を行います。
運航管理者は、これらの事項を適確に処理する処置基準として運行管理規定を定め、これに基づいて職務を確実に遂行しなければなりません。
① 選任運転手以外の者に事業用自動車を運転させないこと。
② 睡眠又は休憩に利用される施設を適切に管理すること。
③ 国土交通省告示に定める基準に従い、定められた勤務時間及び乗務時間の範囲内において乗務割を作成し、これに従い、乗務員に事業用自動車を乗
  務させること。
  (運転者が1の運行において、最初の勤務開始から最後の勤務終了までの時間が144時間を超えて勤務させることはできません。)
④ 乗務員の健康状態の把握に努め、疾病、疲労、飲酒、睡眠不足その他の理由により、安全運転又はその補助業務ができない恐れのある乗務員に事業
  用自動車の乗務をさせないこと。
⑤ 長距離運転又は夜間運転に従事する場合であって、疲労等により安全運転継続に支障が生じる恐れがある場合は、あらかじめ、交換のための運転手
  を配置すること。
⑥ 過積載による運転防止について、運転者その他の従業員に適切な指導監督を行うこと。
⑦ 貨物積載の際、偏荷重が生じない積載をし、運搬中の荷崩れ等による落下防止のため、貨物にロープ又はシート掛け等を行うことを従業員に指導監
  督を行うこと。
⑧ 運行車に対し、道路法規定違反行為を行わないよう、指導監督を行うこと。
⑨ 乗務開始前運転者及び乗務終了運転者に対し、対面で点呼を実施し、報告を求め、確認を行い、更に適切な指示を与えるものとし、それらを記録、
  保存し、又、点呼の際に使用されるアルコール検知器を常時有効に保持すること。
⑩ 運転者の乗務について、当該乗務を行った運転者ごとに記録をさせ、その記録を保存すること。
⑪ 運行記録計による記録を必要とする事業用自動車の運転乗務について、その運行記録計を管理、保存すること。
⑫ 運行記録計による記録を必要とする事業用自動車の運転乗務について、その運行記録計の記録をすることができない事業用自動車を運行の用に供さ
  ないこと。
⑬ 乗務前後の点呼を対面で行うことができない乗務を含む運行ごとに運行指示書を作成し、これにより運転者に適切な指示を行い、また、これを運転
  者に携行させ及び変更の内容を記載させるとともに、それらの運行指示書及び写しを保存すること。
⑭ 運転者ごとに写真の張付及び必要事項を記載した一定様式の運転者台帳を作成し、運転者の属する営業所に備え置くこと。
⑮ 乗務員に対し、道路の状況やその他の運行に関する状況を下に、運行の安全確保のために必要な運転技術や法令に基づき運転に関する遵守すべき事
  項、乗務員の服務、非常信号用具の取り扱い方について適切な指導監督及び特別な指導を行うとともに、その日時、場所及び内容並びに指導監督を

   行った者及び受けた者を記録し、かつ、その営業所において保存すること。
⑯ 異常気象時等において安全確保のための必要措置を講ずること。
⑰ 選任された補助者に対する指導、監督を行うこと。
⑱ 自動車事故報告規則の規定より事故警報が発せられた場合、その事故警報に定められた事故防止対策に基づき、運行安全についての従業員に対する
  指導、監督を行うこと。
⑲ 特別積合せ貨物運送に係る運行系統にあっては、乗務に関する基準を定めるとともに乗務員に対し当該基準を遵守するよう指導、監督を行うこと。
⑳ 運行管理者は、一般貨物自動車運送事業者等に対し、事業用自動車の運行の安全の確保に関し」、必要な助言を行うことができる。

運行管理者試験

運行管理者試験合格は、運行管理者資格要件の一つではありますが、明確な基準であり、最短距離で運行管理者証の交付を受ける手段でもあります。
これから貨物自動車運送事業を始めようとされる方には気になるところではないかと思います。

試験実施機関

公益財団法人 運行管理者試験センターにより運行管理者試験の業務が行われております。
なお、当法人のホームページにより、当該試験実施の詳細が確認できます。
公益財団法人 運行管理者試験センター (unkan.or.jp)

試験実施日及び期間

毎年、8月頃と3月頃の年2回、およそ1ヶ月間にわたり試験が実施されます。

受験手数料等の案内   ・受験手数料    6,000円(非課税)
            ・システム利用料   660円(税込)
            ・試験結果レポート  140円(税込)《試験結果レポートを希望する者のみ対象》
            ・事務手数料     200円(税込)《再受験者のみ対象》
支払方法につきましては、クレジットカード、コンビニ、ペイジーのいずれかの支払方法をCBT試験専用サイトより選択します。

受験資格

新規に受験される方は、次のいずれかに該当することが求められます。

 実務経験1年以上ある
   「自動車運送事業(軽貨物運送事業は除く)の用に供する事業用自動車」又は「特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車(緑ナンバー車
   両)」のいずれかの運行管理に関し、試験日の前日までに1年以上の運行管理に関する実務経験を有する者
  ※ 実務経験は、実務経験承認者の電子メールアドレスを入力し、実務経験承認者からの承認メールにより確認されます

 基礎講習修了又は終了予定である
   国土交通大臣認定の講習実施機関により平成7年4月1日以降に実施される、貨物、旅客の試験に応じた、試験の種類と同じ種類の基礎講習修了
   者、または指定期日までに基礎講習修了予定者
  ※ 講習修了予定者は、指定期日までに基礎講習を修了し、書類のアップロード(登録)が必要になります

出題分野及び合格基準

 出題分野及び出題数は次のとおりとなります
    ⑴ 貨物自動車運送事業法関係                    8問
    ⑵ 道路運送車両法関係                       4問
    ⑶ 道路交通法関係                         5問
    ⑷ 労働基準法関係                         6問
    ⑸ その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識及び能力    7問
                                  合計 30問

 合格基準は次の①及び②を満たすことが条件となります
    1⃣ 総得点が満点の60%(30問中18問以上)以上であること
    2⃣ 上記、⑴~⑷の出題分野については1問以上、⑸の出題分野では2問以上の正解があること

試験地及び受験方法

試験会場については、試験センターHPより確認できます。
受験方法につきましては、試験会場に設置されますパソコンのマウスを操作して回答します(CBT試験を実施)

その他の案内

近年の試験では、合格率が30%台であり、その内容も難化傾向にあるようです。
しっかりとした対策を立てた上で、確実に合格を勝ち取る覚悟をもって試験に臨まれて下さい。

運送事業者によって選任される運行管理者には、運送事業で使用される自動車の安全確保のために、関係法令の理解を通し、運行管理の実務や安全確保に必要な管理手法の習得に努めることが求められます。
そのため、運行管理者には、その選任を受けたときから次に案内する種類の指導講習を定期的に受講しなければならないことが法令により義務付けられております。
各種講習の実施期機関につきましては、国土交通大臣が認定する機関とされ、次の外部リンクより確認することができます。
  事業用自動車の安全対策:自動車総合安全情報 (mlit.go.jp)

基礎講習

新たに運行管理者に選任され、以前に基礎講習の受講をされていない方は、選任届出をした日の属する年度内に受講することが必要となります。
(ただし、止むを得ないと判断される時期に選任された者につきましては、翌年度での受講が認められます。)

  講習目的  新たに選任された方を対象に、運行管理を行うために必要となる法令及び業務等に関する基礎知識の習得
講習時間16時間(3日)
手数料8,900円

平成24年4月16日に施行された改正輸送安全規則により、当施行後に上記事由に該当する者は、基礎講習の受講が義務付けられております。(当施行前に選任された運行管理者には、等規定が適用されませんので、基礎講習を受講する必要はありません。)
よって、選任する運行管理者の中に基礎講習が未受講の者がいる場合、定期的に行われる巡回指導の中で、未受講の指摘を受け、受講されるように指導されることになりますのでご注意ください。

※ 新たに選任した運行管理者とは、当該事業所に初めて選任された者のことをいい、当該事業所において過去に運行管理者に選任されていた者や他の営
 業所で選任されていた者は、新たに選任した者に該当しませんので当該受講の必要はありません。
  ただし、他の事業所において運行管理者として選任されていた者につきましては、当該事業所での選任は新たに選任した者に該当することになるため
 基礎講習の受講が義務付けられることになります。

一般講習

運行管理者として選任されている者を対象に、2年に1度、受講することが必要となります。
(輸送安全規則規程:「最後に国土交通大臣が認定する講習を受講した日の属する年度の翌年度の末日を経過した者」)

 講習目的 運行管理を行うために必要となる法令及び業務等に関する知識の習得
講習時間5時間(1日)
手数料3,200円

基礎講習を受講していない選任されている運行管理者につきましては、一般講習ではなく基礎講習を受講させなければなりません。

特別講習

事故、または法令違反による行政処分を受けた営業所に選任されている運行管理者は、特別講習を受講しなければなりません。

講習目的事故の再発防止を図るための知識の習得
講習時間13時間(2日)
手数料17,900円

特別講習に該当する事例が発生すると、運輸局から、あらかじめ受講者を指名してその受講を促す通知が送られてきます。指名された者は、通知書に記載された期限内に特別講習を受けることになります。
また、運行管理者が複数人選任されている場合は、通常、統括運行管理者が氏名されることになりますが、当該営業所より選任される他の運行管理者についても、通常、2年に1度受講しなければならないとされる一般講習を、2年連続で受講しなければなりません。

運行管理補助者

実務的に運行管理者をサポートする者として、運行管理補助者を設置することができます(設置は任意となります)。

その業務内容は、あくまで運行管理者の履行を補助するものであり、代理業務が行えるものではありません。
ただし、点呼に関する業務につきましては、その一部を補助者が行うことができるものとされております。
(実施回数の3分の1以上は運行管理者が実施していることが必要です。)
しかし、点呼業務において、酒気帯びや睡眠不足等の問題が生じた場合、補助者ではその判断ができません。その場合は、直ちに運行管理者に報告を行い、運行の可否の決定等の指示を仰ぎ、その結果に基づき対象となる運転手に指示を行わなければならないとされております。

運行管理者として選任できる者

運行管理補助者を選任する場合、次のいずれかに該当する者の中から選任しなければなりません。

  ❶ 基礎講習を修了した者
  ❷ 運行管理資格者証の交付を受けている者

整備管理者

整備管理制度では、本来、使用する自動車の点検及び整備並びに車庫の管理については、使用者がそれを行うものとされております。しかし、使用する自動車の台数が多い場合は点検や整備等の管理が困難であったり、又は、特殊構造車両などでは専門的知識をもって車両管理を行うことが求められてきます。
そこで、法により規定される台数以上の車両を保有する事業者には、資格要件を満たす整備管理者を選任し、その者に「自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理するために必要な権限」を与えなければならないことになります。

整備管理者の選任を求める基準

運送事業者は、次の車両数以上を保有する使用の本拠(営業所)ごとに、整備管理者の選任をしなければなりません。

事業の種類 自働車の種類 整備管理者の選任が必要となる台数
(使用の本拠ごと)
事業用
(貨物軽自動車運送事業用自動車を除く。)

バス
〈乗車定員11人以上〉

1台以上
トラック・ハイヤー・タクシー
〈乗車定員10人以下〉
5台以上
自家用 バス
〈乗車定員11人以上〉
乗車定員30人以上は1台以上
乗車定員11人以上29人以下は2台以上
大型トラック等
〈車両総重量8トン以上〉
5台以上
レンタカー バス
〈乗車定員11人以上〉
1台以上
大型トラック等
〈車両総重量8トン以上〉
5台以上
その他の自動車 10台以上
貨物軽自動車運送事業用自動車 軽自動車又は小型二輪自動車 10台以上

整備管理者の資格要件

次のいずれかに該当する者であり、かつ、地方運輸局長よる命令により解任された場合、解任の日から2年(乗車定員11人以上の自動車の使用の本拠に選任される整備管理者にあっては5年)を経過した者を選任しなければなりません。

1整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関して2年以上実務の経験を有し、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
2自動車整備士技能検定規則の規定による一級、二級又は三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
3前2号に掲げる技能と同等の技能として国土交通大臣が告示で定める基準以上の技能を有すること

整備管理者の選任届等

事業者は、整備管理者を選任・変更・廃止したときは、届出書に必由生事項を記載し、次の期間内に地方運輸局長に届出をしなければなりません。

   選任届・・・・・・選任してから15日以内
     ※ 選任届出の際には、整備管理規程の提示が必要となります
  ⑵ 変更届・・・・・・変更のときから15日以内
  ⑶ 廃止届・・・・・・選任者が不在となったときから30日以内
    

整備管理者の権限

⑴ 整備管理者には次の権限を与えなければなりません。

1日常点検の実施方法を定めること
2日常点検の結果に基づき、運行の可否を決定すること
3定期点検を実施すること
4日常点検及び定期点検のほか、随時必要な点検を実施すること
5日常点検、定期点検又は随時必要な点検の結果、必要な整備を実施すること
6定期点検及び前号5の整備の実施計画を定めること
7点検整備記録簿、その他の点検及び整備に関する記録を管理すること
8自動車車庫を管理すること
9運転者、整備員その他の者を指揮、又は監督すること

⑵ 整備管理者は、自主的な管理体制を確立するため、前項に掲げる事項の執行に係る基準に関する整備管理規程を定め、これに基づき、その業務を行わ
  なければなりません。
  また、当該整備管理規程には、前項に掲げる権限に基づく業務が可能な限り具体的に明記されていることが最低限必要であり、さらに、事業者の実情
  を考慮したいかなる権限を付与するかを加筆しなければなりません。
  更に、整備管理規程には、その業務を行わなければならないことが明記されますので、当規程に違反する事実が発覚した場合は、地方運輸局長より解
  任命令が発令されることになりますので、事業者は、その選任後も常に注意監督を行うことが求められます。

地方運輸局長による解任命令

次の理由により、地方運輸局長は解任を命ずることができます。

整備不良が主な要因となる事故が発生した場合であって、その調査の結果、当該自動車について日常点検整備、定期点検整備等が適切に行われていなかったことが判明した場合
整備不良が主な要因となる事故が発生した場合であって、その調査の結果、整備管理者が日常点検の実施方法を定めていない、又は運行可否の決定をしていない等、整備管理規程に基づく業務を適切に行っていなかったことが判明した場合
整備管理者が自ら不正改造を行っていた場合、不正改造の実施を指示・容認した場合又は不正改造車の使用を指示・容認した場合
選任届の内容に虚偽があり、実際には資格要件を満たしていなかったことが判明した場合又は選任時は資格要件を満たしていたものの、その後資格要件を満たさなくなった場合
日常点検に基づく運行の可否決定を全く行わない、複数の車両について1年以上定期点検を行わない、整備管理規程の内容が実際の業務に即していない等、整備管理者としての業務の遂行状態が著しく不適切な場合

整備管理補助者

整備管理者が自ら業務を行うことができない場合、その補助者を選任することができます。(任意)

その場合、次の条件を満たし、かつ、条件を満たすことが整備管理規程により担保されていなければなりません。
 ❶ 補助者は、次のいずれかの条件を満たす者から選任すること
     ㋐ 整備管理者の資格要件を満たす者
      ㋑ 整備管理者が研修等を実施して十分な教育を行った者

      (運行管理補助者のそれとは違い、資格保有や講習修了までを求めるものではありません)
 ❷ 補助者の氏名及び補助する業務の範囲等が明確であること
 ❸ 整備管理者が、補助者に対して規定する研修等の教育を行うこと
 ❹ 整備管理者が、業務遂行に必要な情報を補助者にあらかじめ伝達すること
 ❺ 整備管理者が、業務遂行の結果について、補助者から報告を受け、また必要に応じて結果を記録・保存すること 

まとめ

運行管理者・整備管理者の選任を必ずしも、許可申請の段階で求めているものではありません。しかし、運行管理者・整備管理者を何人選任する必要があるのか、又は他の業務との兼務は可能であるのか等、各種条件によっては人件費計算や社会保険等の加入条件で資金計画に影響を与えることになります。

原則的には、運行開始届の段階でその選任が求められておりますので早めの人選が必要となります。